【コラム】フットサルワールドカップ開催中! 魅力的な国、リトアニア

現在、欧州・リトアニアで開催されているFIFA フットサルワールドカップ リトアニア2021。私は今、取材のためリトアニアのクライペダという港町にいます。

先週11日(土)に現地入りをし、今日で6日目。初めて訪れたリトアニアですが、すっかりこの国の虜になっています。リトアニアの気候や街並み、フットサル日本代表がどのような土地で戦っているのか、その雰囲気を少しだけお届けできればと思います。

リトアニアにはトルコ航空を使い、イスタンブールで乗り継ぎをし、およそ19時間で到着しました。今回、コロナ禍での渡航ということもあり、出入国が今までよりかなり大変でした。私が出発した9月10日(金)現在の日本からリトアニアへの入国は「フルワクチンを終え、14日以上経過していれば入国後の隔離は不要」「ワクチンを終えていない場合は10日間の自主隔離(7日目にPCR検査を実施陰性なら隔離期間短縮)」「国立社会保健センターへの登録とQRコードの取得」が必要でした。

私は2度目のワクチンを終えていたので隔離はなく入国できましたが、これまでのようにパスポートと航空券を見せるだけでなく、そこにワクチンパスポートの提示や社会保健センターへの登録確認などが加わり、羽田での出発が大行列。さらに、おそらく日本人にとっては「出国=海を渡る」という認識があることや国民性もあり、事前の準備をしっかりしている人が多いと思いますが、イスタンブールからリトアニアに向かう際の搭乗手続きでは「登録? していないよ」といった感じの人が多くその場で説明を受けて登録して・・・と待ち時間がさらにかかりました。そしてリトアニアのヴィリニュスでは入国手続きに1時間半! ヴィリニュス空港は日本でいうと大分空港くらいの規模で、入国の受付窓口は6つ。そのうち2つがEU圏専用だったので、たった4つの窓口に人が殺到し、大行列でまったく進まず・・・。コロナ禍での渡航はやはり大変ですね。

 

<リトアニアという国>

初日はヴィリニュスという都市に宿泊し、翌日に日本のグループステージ2戦が行われるクライペダに移動したのですが、空港からホテルとヴィリニュスからクライペダへの移動は日本から車を手配していたので、そこでリトアニアについていろいろと聞きました。

バルト三国のひとつであり、ドイツやソ連の支配下にあったヴィリニュスの国旗は上から黄色、緑、赤の三色。黄色が太陽と名産である琥珀、緑が国土の多くを占める森林、赤はハートと血の色を示しているそうです。地理的に数多くの戦争に巻き込まれたリトアニアは、多くの血が流れた歴史を持つとのこと。さまざまな場所に国旗が掲げてあり、フットサル日本代表がいくつかトレーニングを行ったうちのひとつのアリーナでは、稼働椅子が上から黄色、赤、緑と色分けされていました。二度の独立を経験している分、独立国家というものに対する思い入れや誇りが大きいのかもしれません。

リトアニアの公用語はリトアニア語ですが、第二外国語を話せる割合も高く、人によってはリトアニア語、英語、ロシア語、ポーランド語、ドイツ語など多くの言語を扱えるそう。これにはやはり他国と陸続きで、ショッピングのためにポーランドやラトビアを行き来するといった環境の影響でしょうか。

1990年に独立が回復するまでは英語教育が禁止されており、1990年以降はロシア語教育がなくなって英語教育に変わったので、教育を受けた年代によって話せる言語に差が出るとのことでした。確かにクライペダまで送ってくれたおそらく60代くらいの運転手さんは英語はほぼ単語のみでしたが、それでも地図を見せたり翻訳機能を使ったりすればなんとかなります。初日に「ちょっと待って」と翻訳機能を使い「よい一日を」という言葉を見せてくれてました。英語の「Have a nice day!」に当たる「よい一日を」という挨拶は日本で使うことはほぼないと思いますが、そのような気持ちで迎えてもらい、とてもうれしく思いました。「よい一日を」。改めていい言葉ですね。

リトアニアは多くの人が親切で、フレンドリーで、とても過ごしやすい国です。名産の琥珀は私が滞在しているクライペダのホテルにも特設コーナーがあり販売をしていますし、近くに琥珀専門店もあり、身近なもののようです。

 

<ヴィリニュス>

初日に滞在したヴィリニュスは、ネリス川という川を挟んで旧市街は観光が盛んで飲食店なども流行を反映しているようなおしゃれなお店が多く、川を渡るとスーパーやショッピングモール、市庁舎など日常生活を送る場になるという印象を持ちました。市庁舎もとても立派ですが、その後ろには高層ビル群もあります。これらは独立が回復した際に建てたものだと聞きました。中国の有名企業が入っているビルもありました。

旧市街は街並みがとてもきれい。観光客も多いので人混みを避けるために遠くから眺めるだけでしたが、ただ歩いているだけでも絵になるような街並みが見られました。ガイドブックにも載っていて、ホテルの窓からも見えたゲディミナス城は丘の上にあり、入場料を払って入る観光スポットだったので今回は見上げるだけにとどめました。いつか観光に訪れたい街です。

<クライペダ>

リトアニア到着翌日には、日本がグループステージ2戦を戦うクライペダに移動しました。ヴィリニュスからはおよそ300km離れており、日本でいうと新横浜~名古屋(約330km)といったところでしょうか。途中で今回ほかのグループの試合が行われている都市、カウナスも通りましたが、カウナスは緑がとても多い印象です。国立の自然公園などがあるようです。

クライペダは港町なので大きな船が停泊していたり、フェリー乗り場があったり、川沿いにオープンカフェが立ち並んでいて開放感のあるイメージです。海の近くの生活から自由な感じを受けるのはなぜなんでしょう。観光地としても人気で、土日をクライペダで過ごす人も多いそうです。私は日曜日にクライペダに入りましたが、都市部に戻る高速道路の反対車線は大渋滞でした。

フェリーで細長い島に渡ると砂丘もある人気の観光地だそうです。ニダという街がリトアニア領の最端で、ロシアのカーニングランド州との国境だそうです。日本人の私からすると、陸続きなのに国境があるのはなんとも不思議な感じがしています。

<リトアニアのスポーツ>

リトアニアの人気スポーツはバスケットボール。ヨーロッパでは各国でサッカー人気が高いですが、リトアニアではサッカーよりバスケのほうが人気が高いのだそうです。夏は雨が多く、冬はとても寒いので室内スポーツであるバスケが人気とのことですが、ワールドカップが開催されたことでフットサルも盛んになっていくといいですね。ワールドカップの会場であるクライペダアリーナもとても綺麗な建物です。

また、バスケのほうが人気とはいえ、そこはヨーロッパ。テレビをつければ、言葉は分からないものの、メッシのプレーやグリーリッシュのゴールなどのハイライトがよく飛び込んできます。

 

私があまり出歩かないこともあるかもしれませんが、ワールドカップが大々的に行われているような雰囲気は感じられません。まだグループステージであることや、コロナ禍ということも関係しているかもしれませんが、そもそも街中でポスターや広告を見かけることがほとんどなく、東京で行われていたオリンピック、パラリンピックのようにあちこちでエンブレムやポスターを見かけていた環境とはまったく異なります。

 

余談ですが、2020年のフットサルワールドカップは日本でも招致活動を行っていて、名古屋をはじめとする日本国内で開催されていた可能性もありました。ですが、今の日本の状況を見ると仮に誘致が成功していたとしてもオリパラ同様、無観客だったのでは、と思います。とはいえ、リトアニアに渡航するのも大変な労力なので、やはりウィズコロナなのかアフターコロナなのか、もう少し以前の生活に近づく日が訪れるといいな、と思います。

 

フットサル日本代表がグループステージを1位か2位で通過すると、試合会場は初日に滞在したヴィリニュスになります。ぜひ勝ち上がってもらい、一緒にヴィリニュスに戻りたいと思っています。

 

取材・文=しょうこ